「多世界解釈」量子力学を真剣に受け取る解釈へのパラレルワールド考

宇宙と猫 ドラクエ村
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 みなさん、ご機嫌いかがお過ごしでしょうか

こんにちは! サヘランです

ごく最近、日本国内の物理学専門家からの「多世界解釈」の動向をまとめた書籍『量子力学の解釈問題ー多世界解釈を中心としてー』和田純夫著 出版サンエンス社が発刊したので購入し読んでみました!(この書籍の内容に触れます。最初から本を読まれる予定の方は、ネタバレに注意してくださいね)

これを機に、気になっていたパラレルワールド考をしてみたいと思います。前回の記事はブログカードからご覧ください。

量子力学を真剣に受け取る解釈とも言われる「多世界解釈」の真価とは何でしょう!

「並行多世界の存在」の意義はあるのでしょうか?みなさんは、どんな風に考えますか。

それではみなさん、しばしのお付き合いのほど

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「多世界解釈」量子力学を真剣に受け取る解釈とも、言われるゆえんは?

 率直に申し上げるならば、「多世界解釈」はシンプルで純粋で余分なもの(並行世界の共存を余分と思わなければ)が介在しないという解釈なのだということなのです!

以下に記すように、3つの最小公理系だけで済むのが特徴です。

① 量子系の状態は、何らかのヒルベルト空間に属する状態ベクトル(波動関数)によって記述される
② 状態ベクトルの時間発展は、シュレディンガー方程式によって記述される
③ 「読み取り公理(read-off postulate)」状態ベクトルをφとし、そのノルムは
   ||φ||2=∑φφ=1
 と表わされるとする

これに対して、「コペンハーゲン解釈や標準解釈」では、さらに観測による④状態の収縮や、⑤ボルンの確率測をさらに公理系に加えているのが特徴です。

一次元の状態ベクトル
一次元の状態ベクトルのグラフ・イメージ:引用元

逆に言えば、④は多世界の共存と独立性を認める、ということで必要なくなります
また、⑤は粒子の状態は状態そのものから読み取るべきで、状態から離れた演算子および固有値によって定義されるものではないとする(同等の結果が読み取れる保証がある時には、演算子などを使い、期待値などに関する従来の公式を使用できる)のです。

「多世界の共存と独立性」を認めるだけで、シンプルにもたった3つの公理系のみで済むようになるというところが、多くの多世界解釈派が共有している発想ということです

”シュレディンガーの猫”「コペンハーゲン解釈」と「多世界解釈」の違いは?

 有名な ”シュレディンガーの猫” の思考実験で、ご存知の方も多いと思いますが…

1個の放射性原子核、放射線の検出器、毒の入った瓶、検出器が反応するとその瓶を壊すハンマー、瓶からの毒によって殺される運命にある猫、全体を覆う密閉された箱、そして箱の中を覗こうとする人間からなるシステムですよね。原子核が崩壊する前は、次の様に記せ

  |放射性原子核〉| 毒入りの瓶を含む装置全体〉| 猫 〉| 人間 〉

放射性原子核による放射線の放出は量子現象なので、時間が経過すれば状態は
 
 α|放射性崩壊前の原子核〉+ β|放射線+放射線崩壊後の原子核〉

となりますが、ここでαβは時間の関数です。

 コペンハーゲン解釈では、放射線が放出された段階で状態の収縮が起きると考えるので、後ろの β の付いた項だけが残り、それに応じて瓶から毒が放たれて猫が死ぬ、各時刻で猫が生きているか死んでいるかの確率は、|α|または|β|で計算されます。

 また、ノイマン派の標準解釈では、少なくとも猫まで状態の重ね合わせを考え

 α|崩壊前の原子核〉| 壊れていない瓶〉| 生きている猫 〉+ β|放射線+崩壊後の原子核| 壊れた瓶〉| 死んだ猫 〉

と重ね合わせで表わされることになります。そして、箱を人間が覗いた瞬間に、状態の収縮が起こって一方の項だけになると捉えます(ノイマン流にこの人間の意識が状態の収縮をもたらす! とすれば)。

シュレディンガーの猫
シュレディンガーの猫・イメージ

 そして、多世界解釈ではそもそも状態の収縮は起きないと考え

α|崩壊前の原子核〉| 壊れていない瓶〉| 生きている猫 〉| 生きている猫を見ている観測者〉+ β|放射線 + 崩壊後の原子核| 壊れた瓶〉| 死んだ猫 〉| 死んだ猫を見ている観測者 〉

で表されるような重ね合わせ(共存)を考えても矛盾は起こらないと捉えます

あなた自身が観測者で、まだシステムに入らないでこの式を立ててみている段階では、「解釈者」として2つの世界が共存していることを知ります

「観測者」としてシステムに入った段階で、猫が生きているか死んでいるか、どちらか一方の世界に存在している自分を自覚し、他方の世界との干渉は無くなり(共存する並行世界が存在しても)認識できなくなります

波動関数の収縮のような確率的に起こる事象ではなく、共存度αβにあたる)のようなものが、観測者としてあなたが居ることになるであろう世界を決定していると考えられています。

「多世界解釈」の特徴は、「観測者」と「解釈者」との区別が本質的!

 いかがでしたでしょうか、

並行世界の共存について、有名な例の猫の生きている世界と、猫の死んでいる世界については?

「多世界解釈」を知っていれば観測の事前に「解釈者」となることが出来て、2つの世界が共存していることを知ります

多世界解釈の解釈者
多世界解釈の解釈者・イメージ

結果の観測後は後で、もし「多世界解釈」を知らなければ ”生か死かの1つの結果だけ” を世界と捉えます。これは「多世界解釈」の観測者と世界の認識の仕方がちがいます。

並行して共存する世界を認めるか認めないか、実在の捉え方に格段に大きな差があるといえます!

ただ1点、共存する並行世界を認めることが出来るか否かが、「多世界解釈」という実在の把握の仕方のカギとなってきます。

認められれば、標準解釈等の状態の収縮というメカニズム不明な確率的な事象を排除出来るのです

前出の書籍には、20世紀から21世紀にかけて行われた、遅延選択、量子消去、無相互作用、弱測定などの実験のミクロな状態の共存の例をあげて説明してあります。

ミクロな状態の共存が理解できれば、マクロな状態の共存も延長線上に見えてきます!

また、「多世界解釈」は観測者も状態に含める考え方なので、観測者にとって世界がどのように見えるか論じる事ができる利点があり、宇宙全体を量子論で扱う宇宙論にも適しているとのことです。

どうでしょうか、サヘランでなくてもたぶん「多世界解釈」は実在の把握の仕方に、数段も奥行きのある方法に思えるのは気のせいでしょうか?

みなさん、最後までご覧いただきありがとうございます

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