こんにちは! サヘランです みなさん、いかがお過ごしでしょうか
時ならぬ雨にぬれても、木々の緑はより鮮やかさを増して見えます。
緑色といえば、葉っぱの「葉緑体」、この植物細胞のなかで「光合成」が行われているのはよく知られていることです。
それでも、「葉緑体」の内部で受け取った光エネルギーを、”量子力学の原理”によって、エネルギー最適化して、反応の最終的に糖類をこしらえていることは耳新しいです。
自然界にあふれているが、すべての生物の基盤という第一生産者の緑色植物が、量子のはたらきを活用する方法を原初より獲得しているとは、大変に驚くべきことです!
今回は、ジム・アル=カリーリとジョンジョー・マクファデン著『量子力学で生命の謎を解く』にそってその内容をみていきたいと思います。
それではみなさん、しばしのお付き合いよろしくお願いします。
「植物の生命力」は「葉緑体」内の量子コンピューターの計算力だった
光合成は太陽光からのエネルギーを得て化学反応を行っているが、「太陽光からのエネルギーを受け」て「水から電子を取り出す」根幹部分の光化学系は「反応中心」とも呼ばれています。
「反応中心」の周りを取り囲む光集合複合体(光受信アンテナ)には、数十の緑色色素「クロロフィル」が含まれてまれていて、それぞれのクロロフィルが太陽光の粒子を得ています。
そして、次の簡単な規則①~③にしたがってエネルギーを受け渡しています。
①それぞれの「クロロフィル」は、太陽光の粒子から得たエネルギーを「反応中心」まで届けなければならない
②エネルギーの運搬は、隣の「クロロフィル」に渡すことにより行われる
③ある「クロロフィル」から「反応中心」までに至る路はいくつもある
③は巡回セールスマン問題「セールスマンがいくつかの都市を1度ずつすべて訪問して出発点に戻ってくるときに、移動距離が最小になる経路」を解くのと同様です。
スーパーコンピューターを用いても最適解を求めることが困難な、「組合わせ最適化問題」の中でも有名な問題です。
都市数をnとすると、可能な経路の総数はn!/2n通りで、例えば10都市では組み合わせ総数は181440通り、30都市になると4.42×1030通りと天文学的な総数でスパコンを用いても気の遠くなる時間がかかります。
ところが、「組合わせ最適化問題」を解くのに適している量子コンピューターでシミュレーションしたように、短時間で目的の光合成を行う「反応中心」に到達しているという。
しかも、到達率は100%近い驚異的な値です(太陽光発電でのモジュールの変換効率が20%ぐらい)
まさに、「植物の生命力」は「葉緑体」内の生体型量子コンピューターの計算力だったのですね!
「太陽電池」の作動原理ににている、クロロフィルの「励起子」の生成
太陽電池では、ケイ素Siの原子に光のエネルギーが当たることで自由電子(負の電荷)が飛び出し、電子の不足した状態となり、相対的に正の電荷をもつように見える空間(正孔)が発生します。
同様にして、クロロフィルは”30億年も先輩!”ですが、中心となるマグネシウムMg原子に光エネルギーが吸収され、最も外側の軌道上にいる電子がエネルギーを受け取り軌道から飛び出すことで、正孔をつくります。
そして、自由電子(-)と正孔(+)とで小さな電池のようにはたらき、このようなペアを「励起子」といい量子状態をとっています。
「クロロフィル」から次の「クロロフィル」へと自由電子の玉突き衝突が起き、正孔が移動することで元は光のエネルギーだった「励起子」のリレーがおこなわれ、最終的に「反応中心」へ運ばれ光合成反応に利用されるのです。
肝心なリレーのルート(経路)は量子状態の利点で、全ルートの”重ね合わせ状態”をとることができるので、ナビでいうと「全ルート検索済み!」と音声案内がでるような状況です。
また、「励起子」同士は離れていても「量子もつれ」の関係にあり”瞬時に連関しあう”関係ですので、論理演算に利用(まさに量子コンピューターの量子ビットのように・関連記事は以下)できます。
どのように「励起子」が伝わっていくのかを最初に調べたのがグレッグ・エンゲル氏で、米国カリフォルニア大学のグレアム・フレミング氏の研究グループの一員でした。
エンゲル氏はレーザーパルスが光合成複合体中の「励起子」に衝突すると、「励起子」の電子と正孔が再結合し、もとの”光子となって光信号を放出”するので、それが検出される様子を研究していました。
結果的に検出された光信号の強度に山と谷があるということで、「励起子」が”重ね合わせ状態にある量子”として量子波動状態を維持したまま走行し、レーザーパルスとの衝突によって波束収縮の山と谷状態に変わって検出されたと考えるほかないだろうとしました。
フレミング氏らは、「クロロフィル」を含む光合成複合体は、”量子コンピュータのように動作する”ことで、「反応中心」へ至る最速経路を見つけているとの驚愕の説を提唱します。
このような「量子のうねり」はその後、細菌、水生藻類、ほうれん草で発見され、室温で同様の量子輸送が検出されるのは、まさに驚くべき事実となっています(開発中の量子コンピューターは極低温環境下でかろうじて作動)
もっとも身近な「量子もつれ」は生物圏でもっとも重要な生化学反応「光合成」
食物連鎖の図をみると、生物圏で緑色植物は唯一の生産者でして、他はすべて消費者にあたります。
お分かりのように、その生産のみなもとは、緑色植物の「光合成」に他なりません。
そして、今回みてきたように、量子レベルの「重ね合わせ、もつれ」などの性質を最大限に活用していることが分かりました。
ある仮説には、光合成細菌や植物が光合成を行っているような温度で量子輸送の効率がもっとも高くなるとあります。
30億年にわたる自然選択と進化によって、量子レベルの「励起子」によるエネルギー輸送のメカニズムが微調整され、生物圏でもっとも重要なこの生化学反応が最適化されたとされています。
まずは、先立つ現象ありき!自然の「重ね合わせ、もつれ」など、量子の性質が作用し豊かな生物圏を地球に誕生させていったといっても過言ではありません。
みなさん、いかがでしたでしょうか
緑色植物の「光合成」の「量子もつれ」を用いたエネルギー最適化戦略を知ることの価値!
窓からみえる「鮮やかな緑の植物」に対比して、われわれ人間も量子の性質「重ね合わせ、もつれ」を身近に電子機器で使っているのは確かですが、緑色植物の生産量に比べてみると「まだまだだね!」と言われているような気がしてきます…
そうするとみなさんと同じく、サヘランも自然界の不思議さと畏敬の念にかられてやみません‼
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント